COLUMN

【コラム】機能性表示食品の機能成分モナコリンKと医薬品有効成分のロバスタチンは同じ物質である

【コラム】機能性表示食品の機能成分モナコリンKと医薬品有効成分のロバスタチンは同じ物質である

著者 岡村 元義

2024年6月7日

機能性表示食品って何?

 摂取者に健康被害が出て大きな問題になっている紅麹由来の機能性表示食品であるが,いったい「機能性のある食品」とは何なのか? 医薬品の「有効性」とどう違うのか? 素朴な疑問がわいてきたので調べてみた。

 機能性表示食品は,食品表示法1)に定義されており,科学的根拠に基づいて特定の保健の目的が期待できる旨の表示を行う製品を販売するために消費者庁長官に届出された食品を指す。機能性表示食品を含む食品と医薬品は図1のように分類区分される。2)

 機能性表示食品は,科学的根拠等について消費者庁長官による個別審査を必要とせず,届出に より販売できる点で特定保健用食品(トクホ)と異なる。医薬品と食品は,規制手続,管轄省,流通において厳然と区分されている。一方なぜ食品にこれほどまでに細かな分類がされてきたか?であるが,我々が日頃摂取している食品の中に生命維持に必要となるさまざまな成分が含まれている。そのうちの特定の成分が欠乏するために病気になる場合がある。病気を引き起こす成分が同定され,その病気にかかった人がその成分を服用することにより病気が改善されることが分かったとき,その作用を「薬効」というのだ。市販服用薬のほとんどは合成医薬品であるが,合成医薬品ももともとは食品に含まれている天然成分を元にして,化学合成という製造法によって医薬品にしている。病気の状態を健康な状態に戻すのが医薬品,病気までには至らないが健康不安定な状態を安定に維持するのが健康食品であるといえる。国民の健康志向は高く大きな市場であるため,健康維持に関わる機能成分を強化した食品を世に出したいという供給側の勢いから食品の多様化が生まれたといえよう。

 誤解されることが多いようだが,保健機能食品の表示および発売に関する管轄は消費者庁である。平成21年,国民の健康維持に有益とされる機能性食品の普及を目的として,保健機能食品表示の管轄が厚生労働省から消費者庁へ移管され3),平成27年には機能性表示食品を正しく販売するためのガイドラインがつくられた4)。 ただし,ガイドラインにもあるように,食品の安全性については厚労省が消費者庁と連携してメーカーの指導を行っている。今回の紅麹製造工場には厚労省が立入検査を行っている。

機能性表示食品の「機能」と医薬品の「薬効」はどう違うのか?

 特定の代謝産物が過剰に体内に蓄積されることによっておこる病気として高脂血症がある。高脂血症は栄養成分のうちLDL(低脂肪コレステロール)が必要以上に多く体内に蓄積されて起こる病気である。肝臓は,栄養成分を蓄積すると同時に余った栄養成分を分解する機能を持つ臓器である。図2に示すように高脂血症の原因となるコレステロール(LDL)は肝臓によって合成される。合成過程でHMG-CoA還元酵素によってHMG-CoAからメバロン酸への転換が起こるが,この反応がコレステロール生成の律速となっている。医薬品のロバスタチンはHMG-CoA還元酵素と構造が似ており,拮抗的にコレステロール合成を阻害するので高脂血症の治療薬として使われている。

実は機能性表示食品において「機能成分」とされるモナコリンKは,医薬品の「有効成分」であるロバスタチンと同一物質である! モナコリンKとロバスタチンは発見の経緯もそこからの商品化の経緯も異なり,それぞれ独自に食品,医薬品として世に出てしまった。筆者も紅麹問題が起きなければ,この2つが同一物質であることなど知るよしもなかった。機能性表示食品のモナコリンKも医薬品のロバスタチンも類似の化学構造を持つHMG-CoA還元酵素と拮抗的にHMG-CoAに作用してコレステロールの合成を阻害する作用がある,というようにそれぞれの製品説明書に記載されている。

 さらに,2つの成分の臨床データも同等となっている。(図3) 機能性表示食品は臨床データを取る必要はなく消費者庁への届出のみで販売できるのだが,この紅麹製品はご丁寧にも臨床データを取っている。5) 機能性表示食品摂取後の総コレステロールおよびLDLコレステロール値の低下率(TC/LDL-C) の13%/15%は,医薬品服用後の低下率18%/25%と同等といえる結果となっている。6) もちろん機能性表示食品の臨床試験は健常者,医薬品の臨床試験は高脂血症患者に対して行っているので単純に比較できないが,同一物質が,あるときは「食品」として,あるときは「医薬品」として市場に出回るのは問題ではないか? 臨床試験は不要であるのにわざわざ食品の臨床データを取っているのであるから,その「機能」が「薬効」に該当するのではないか?との気づきが発売前にあってほしかったと思う。

認められない表示がされている機能性表示食品が多い!

機能性表示食品が届出制であることが商品の安全性に問題のある製品の発見を遅らせているように見える。消費者庁のホームページには,機能性表示食品の届出情報検索ができるようになっている。7) 現在何と8,300件以上の機能性表示食品が登録されている! このうち店頭でよく見かける機能性表示食品の「機能性」をうたった表示を取り出してみた。(表1)

機能性表示食品の届出等に関するガイドライン4)には,表示として認められない表現について例示されているが,店頭に並べてあるものを見ただけでも認められない表示がされている製品が多く見受けられた。少なくとも「薬効」をにおわせる表現は使ってはならないのだが。このような違反状態がはびこっているのは機能性表示食品が届出制であるからに他ならない。今回の紅麹問題を受けて国はガイドラインの見直しを検討しているが,いっそ機能性表示食品の区分をなくし,健常者の臨床試験を付けて許可を受ける必要がある特定保健用食品(トクホ)1本にするべきだと筆者は考える。

プベルル酸は不純物である

 5月29日に厚労省は,紅麹製品より検出されたプベルル酸は腎機能障害を引き起こすとの動物における腎毒性結果を発表した。8) 紅麹製品摂取者から腎障害例が相次いだことを裏付ける結果としているが,気になるのは,こういった報道により紅麹製品そのものが腎機能障害の原因物質との誤解につながらないか,ということだ。プベルル酸は「機能成分」ではない。製造工程で混入した青かび由来の不純物である。プベルル酸にばかり注意を向けてしまい,「機能成分」であるモナコリンKの「機能」についての再評価があいまいになってはいけない。

機能性表示食品は健常者向けの製品であり,医薬品は罹患者向けの製品である

 紅麹由来機能性表示食品を摂取していた人のうち5名が死亡したとのメーカー報告があった。5名のうち3名は前立腺がん,悪性リンパ腫,高血圧・高脂血症・リウマチの既往症があった。8) したがって紅麹製品と死亡との関連性があるとは断定できないという話になっている。

 おそらくその通りであろう。しかしその因果関係を論ずるよりも機能性表示食品の定義,安全性のチェック機能の見直しをする方が先ではないか?

 機能性表示食品ガイドライン4)には,機能性表示食品を以下のように定義している。

 “機能性表示食品とは、

 疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)を対象としているものであること。“

 “疾病に罹患していない者とは、境界域までの者をいう。例えば、診断基準で軽症以上と判定される者は該当しない。“

 つまり,健常者向けの機能性表示食品を罹患者が摂取するのは問題ないのかどうか? おそらくがんの既往症患者に対し異なる疾患である高脂血症症状を改善するために,医薬品と機能性表示食品を併用して服用するというのは,これまでもあらゆる疾患治療で広く行われていたので問題ないのかもしれないが,そうであればこのガイドラインにおける機能性表示食品の定義を見直す必要があるように思う。(一般食品と区別するために”食品”の表記を避けて”サプリメント”とするとか・・・)

 “モナコリンKは紅麹由来の食品成分であって,医薬品ではない”と,どこまでも言いきることはできないと思うので,この際,食および医薬品の安全性については業界を超えて活発な議論がなされるべきではないか? 食品にも一応GMPがあるが9),医薬品GMPほどの規制上の縛りはない。しかし,健康被害が出る事態になってしまったので,食の安全性確保には医薬品GMPをベースにしてこの食品GMPを併せて見直すのが最適で最短な道なのかも知れない。

  1. 食品表示法 平成25年法律第70号
  2. 齋藤綾音,第3の制度「機能性表示食品」の概要と課題,参議院事務局企画調整室編集 立法と調査 2015. 9 No.368.
  3. 厚生労働省HP>食品安全情報,消費者庁への食品表示等業務の移管について.
  4. 機能性表示食品の届出等に関するガイドライン 制定平成27年3月30日 消食表第141号,改正令和6年4月1日.
  5. 消費者庁 機能性表示食品の届出情報 届出番号G970および小林製薬HP機能性表示食品情報.
  6. 日本動脈硬化学会編 脂質異常症診療ガイド2023年度 代表的な臨床試験.
  7. https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/
  8. 厚生労働省 健康・生活衛生管理局 食品監視安全課発 紅麹関連製品に係る事案を受けた機能性表示食品制度等に関する今後の対応について, 令和6年5月29日.
  9. 錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン)」及び「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)健生食基発0311第2号 令和6年3月11日.